ベヒモスが目を覚ますと、そこには片眉を上げたアスモデウスが居た。
左腕が鉛のように重い。
ちら、と視線を向ければ、そこには目元を赤く染めたナギが規則正しい寝息を立てていた。
「まったく……。もう少しで我が子を殺すところだったのですよ」
「も、申し訳ありません」
「それと、そちらのお嬢さんを泣き止ませてあげなさい。先程から煩くて敵いません」
アスモデウスが指差した先には、ナギの背に縋るチヨの姿があった。
「見えていらっしゃるので?」
ベヒモスの問いに、アスモデウスは「さあ?」と言って妖艶な笑みを返した。
「貴方の身体に纏わりついていた気色の悪い魔力は消しておきました。直に動けるようになるはずです。落ち着いたら、陛下の元に来なさい」
「で、ですが」
「――良いですね?」
有無を言わさぬ口調に、ベヒモスは首を縦に振ることしか出来ない。
静かに部屋を出ていったアスモデウスの後姿を見送ると、ベヒモスは娘の背で涙を零すチヨに手を伸ばした。
「チヨ」
『酷い! あんまりです! 何故、こんな酷いことが出来るの!!』
「落ち着け、チヨ。ナギが起きてしまう」
かつては弟のように思っていた少年が、ベヒモスにしたことを思うとチヨは涙が止まらなかった。ベヒモスと離れ離れになってからは、引き裂かれた悲しみの所為で、自分の世話係となった彼には酷く冷たい態度を取ってしまった。けれど、それは半ば誘拐のような形で自分とベヒモスの間を引き裂いたジグと教会に対する怒りがそうさせたのだ。
聖騎士にとって教会の命令は絶対。チヨとてそれは分かっている。分かってはいるが、ジグがベヒモスに『光の加護』を施しているとは思いもしなかった。
『「光の加護」を受けた者は聖剣の力を分け与えられ、対象の魔族を見ると攻撃するようになります。ジグはナギがこちらに来ることを想定した上で、貴方に殺させようとしたのでしょう』
親が子を殺す――考えただけで、ゾッとした。
未遂とは言え、実の娘に手を上げてしまったことがベヒモスの罪悪感をより加速させる。
ベヒモスの魔法は身体を鋼のように硬質化するものだ。もし、あのままヴォルグが拳を受け止めてくれていなかったら、とベヒモスの顔から色が消える。
「……ジグ、というのは君があのとき言っていた」
『いいえ。ジグとは代々「聖人」の位に与えられる名前なのです。先代のジグは初めて「聖剣」を与えられた方でしたが、私たちが離されてから一月の内に不審な死を遂げました。ですから、今はその方の息子が「ジグ」を名乗っているはずです。それに大聖人は息子の方を溺愛していましたから、先代よりも扱いやすい息子を「ジグ」にすることを良しとしたのかもしれません』
「では、私に術を掛けたのは」
『恐らく、当代のジグで間違いありません。ですが、一体どこであの子と、』
チヨの言葉に、ベヒモスは唸った。
チヨのこともそうだが、ここ十年ほどの記憶があやふやなのだ。彼女と初めて目が合ったときに言われたように、記憶封じの呪いが掛けられているのか、何かを思い出そうとしただけで鈍い痛みが頭を襲った。
「……うっ」
唯一思い出せるのは、靄の中でこちらを見下ろしながら不敵に笑うベルゼブブの姿。妖しく光る蒼玉の眼に浮かぶ、白薔薇を隠すようにモノクルを付け直していたのが印象的だった。
『何か、思い出しました?』
「駄目だ。ベルゼブブに何かを言われたところで、記憶が途切れてしまう」
『その方は、確か……』
「ああ。あのとき、私をこちらに連れ帰った魔族で、三貴人にも所属している男だ」
ベヒモスはハッとした表情になって、不安に揺れるチヨを凝視した。
「魔族を見て殺すように命令式を出すことが出来るなら、その術式を見た者に命令式を出せる術を掛けることができるのではないか?」
『……!』
「もし、ジグとやらがベルゼブブに会ってその術を掛けていたならば、彼の目を通して私に術を掛けることも容易なはず」
だが、そうなるとベルゼブブは最初から先代の王が死ぬことを予見していたことになる。そうでなければ、シュラウドを追ってベヒモスが人間界に行くこともなかった。
「最初から全て、仕組まれていたことだったとしたら……?」
ベヒモスは青い顔のまま、上体をゆっくりと起こした。
その拍子に、眠っていたナギの身体がずり落ちてしまうが、今はそれどころではない。
『顔色が悪いわ。まだ、横になっていた方が』
「すぐにでも、陛下の元に向かわねば! 大変なことになる!」
『落ち着いてください、ベヒモス! まずはナギと話をするのが先でしょう!』
訳も分からないまま、殺されそうになったのですよ、とチヨが語気を強くするのに、ベヒモスはぞわぞわと増幅していた不快感が静かに凪いでいくのを感じた。
ひたり、と冷たい汗が項を伝って背中を流れていく。
ベヒモスが身体を起こした所為で、ナギの髪はぐしゃぐしゃに乱れていた。
「ナギ」
ベヒモスの声に、ナギの肩がピクリと揺れる。
次いで、ゆっくりと開かれた双眼は、うっとりするほどに美しい金色であった。
「もう、平気なのか?」
掠れた声が、昨夜は泣きながら眠ったことをベヒモスに知らせる。
うっすらと腫れている眦を優しく撫でてやれば、くすぐったいのか僅かばかりに眉根寄せてこちらを睨んでくる。
「な、なんだよ」
「……すまなかった」
「別に。殺されかけたのは、気にしてねえ。ただ、アンタが親父だったってことの方に、ビックリしただけだ」
「ふっ」
「わ、笑うな!」
「すまない。懐が広いところは、母親に似たのだな」
ナギの真上に浮かぶチヨが、ぱちぱちと瞬きを繰り返しているのが可笑しい。
カラカラ、と笑い声を上げるベヒモスにナギは片眉を持ち上げた。
「そう、なのか?」
「ああ。その目も、顔もチヨにそっくりだよ」
「……ふーん」
「顔が赤いぞ?」
うるせえ、と捨て台詞を吐き出すとナギは部屋から出て行ってしまった。
ベヒモスが起きたことをヴォルグに知らせに行ったのだろう。
照れ隠しが下手なところも、母親そっくりだなとベヒモスは喉を逸らして笑った。
ベヒモスが意識を取り戻したことをヴォルグに伝えると、彼は「良かった」と言って口元を綻ばせた。
「良かった、ってお前なぁ。殺されそうになったんだぞ?」
「それは君も同じでしょ。そんなことより、久しぶりの親子の対面だ。ゆっくり話は出来たのかい?」
「……まあ、一応」
ぽりぽり、と頬を掻くナギを見て、ヴォルグは目を細めた。
涙が滝のように流れていたのが嘘のように、鮮やかな桜色に染まる頬を見て「ふ」と短く息を吐き出す。
「嬉しそうだね?」
「わ、悪いかよ」
「それに、素直だ」
――素直な君はとても可愛いと思う。
ぽろり、と零れた本音に、ヴォルグは口元を手で覆った。
言うつもりなんて全くなかったというのに、ナギが柄にもなく照れた風に唇を尖らせていたこともよろしくなかった。
「……お前でも、そんな寒いこと言うんだな」
「自分で言っておいてなんだけど、今ちょっとダメージを受けているから触れないでくれる?」
「『素直な君はとても可愛いと思う』」
「わー!! 言わなくていい!! 言わなくていいから!!」
「ぶふっ! あはは! 何だよ、その顔!」
「ナギっ!!」
からかわないでくれ、と彼女の手を掴めば、予想外の接触に驚いたのかナギの目が大きく見開かれた。
ベルフェゴールの一件から、肌が触れ合う距離間をお互いに避けていたことを思い出す。
小さく震えるナギの指先を見て、ヴォルグはそっと手を離した。
「あ、ちが……っ」
「良いんだ。今のは僕が悪かった。ごめんね」
少しだけ距離を置くように椅子から立ち上がったヴォルグを見て、ナギの目は揺れた。
ヴォルグにそんな顔をさせたい訳ではない。
謝ろうと思っても、彼はこの件に触れることを酷く嫌がった。
どうしよう、と狼狽えるナギを救ったのは、コンコンと響いたノックの音である。
「ベヒモスです。よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「失礼します」
「まだ、寝ていた方が良いんじゃないのかい?」
ヴォルグが労うようにドアを開けば、ベヒモスは曖昧な笑みを浮かべて部屋の中に足を踏み入れた。
「丈夫さだけが取り柄ですので」
「誰かさんと一緒だね」
「それは俺のことを言ってんのか? あ?」
ドスの効いた声を出したナギに、ヴォルグとベヒモスが顔を見合わせて笑う。
彼の腕を支えるようにして、一緒に部屋の中に入ってきたマモンにドアを閉めるよう促すと、ヴォルグはベヒモスをソファに座らせた。
再び椅子に腰を落ち着かせたヴォルグの隣で、ナギが心配そうにベヒモスを見つめる。
全員が腰を落ち着かせたのを見ていたかのように、紅茶を持って現れたマリーが部屋に入ってきた。
カップを受け取りながら、この場に居ないもう一人の腹心の名をヴォルグは呟いた。
「アスモデウス」
「ここに」
ヴォルグの影から姿を見せたアスモデウスが、数枚の書類を彼に手渡す。
「ベルフェゴールとベルゼブブの渡航・渡界記録を纏めたものです」
「何故、そんなものを?」
マモンが疑問の声を上げれば、アスモデウスがはあ、と溜め息を吐き出した。
「貴方、ご自分が上げた報告書の内容も忘れたのですか」
「え、」
「ベルフェゴールが毎年決まった時期に領地を離れると記載していたでしょう? おかげで私とナギがどんな目に遭ったか、詳しく語って聞かせましょうか?」
ぴくぴくと口の端を引き攣らせながら凄んだアスモデウスに、マモンは両の手を上げて降参の意を示した。
「それでは皆様、おかしな点が無いか、確認をお願い致します」
珍しく疲れた表情でアスモデウスが言葉を吐き出す。
それぞれの前にどしーんと聳え立った書類の山に、先程までそれを選別するのを手伝っていたナギが「げ」と嫌そうな声を漏らした。
冷たい空気に包まれた部屋の中に紙を捲る音が、小さく反響を繰り返す。
「あ、」
そんな静寂を破ったのは、あるページを凝視して戸惑いの表情を浮かべたマモンであった。
「何か見つけた?」
「ここ、先代の魔王陛下が亡くなる半年ほど前に、お二人が二カ月連続で人間界に向かわれています」
三貴人が同時に出撃するのは珍しいことではない。
だが、二カ月も続いて同時に戦場へと赴くことは滅多になかった。
「確か、先王が亡くなる半年前に、ベルゼブブ様の御父上が亡くなったのではありませんでした?」
マリーの言葉に、ヴォルグとアスモデウスは顔を見合わせる。
「ベルゼブブ家の先代当主は、先々代の王と交流が深かったと聞く。残念ながら父上とは馬が合わず、代わりに息子のベルゼブブが三貴人に選ばれた」
「先代の魔王候補にも挙がっていた方です。息子の出世には複雑な気持ちがあったでしょうね」
アスモデウスの言に、ヴォルグが床を見つめながら言った。
「ああ。……それに、自分を蹴落とした王を殺したいと思う気持ちも少なからずあっただろうね」
その場にいた全員がハッと息を呑んだ。
唯一、事情を詳しく知らないナギだけが、眉間に皺を寄せるだけに留まる。
「そんな、まさか……」
「でも、もし王に選ばれなかったのをずっと恨んでいたのだとしたら? 王を殺して、新たな選別の儀を行おうとしても不思議ではないわ」
眉間に皺を寄せ、険しい表情を浮かべるベヒモスとアスモデウスの二人に、ヴォルグは書類を握る手に力を込めた。
くしゃり、と歪んだそれは、次いで黒い炎に包まれて灰へと変わる。
「ベヒモス」
「はっ」
「ベルゼブブの目に白薔薇が浮かんでいるのを見たことがあると言ったな?」
「はい」
ヴォルグが、ゆっくりと血走った目でナギを見据えた。
「……ベルフェゴールの胸にも、白薔薇があった」
導き出される答えは一つ。
二人が共謀して、王を殺した。
王を支えるはずの三貴人が、王を殺す。
あってはならないことが起こっていたのだと、その場に居た全員の表情が凍てついた。
「三貴人を呼べ」
ヴォルグが椅子から立ち上がりながら短くそう告げた。
「レヴィアタン様に、ご連絡しなくてよろしいので?」
「明日の朝一番に会議をすると伝えろ。レヴィにはそれで伝わる」
「承知いたしました」
ヴォルグが発した威圧感の中で、唯一口が利けたアスモデウスが一礼と共に再び影へ身を沈める。
彼の声に含まれた激しい怒りが、その場にいた全員を恐怖で動けなくさせていた。
「……早く持ち場に戻れ」
冷たい温度を宿したままの命令に、マリーとマモンの二人がおぼつかない足取りで部屋を出ていく。
唯一残ったベヒモスだけが、心配そうに彼を見つめていた。
「陛下」
「平気だ。お前ももう部屋に戻って休め」
「ですが、」
食い下がるベヒモスを、ナギが制した。
「俺が居るから、大丈夫だ。親父殿は部屋に戻って身体を休めてくれ」
さあ、と背中を押して、半ば強引に部屋から退出させる。
振り返れば、険しい表情のままこちらを凝視するヴォルグと目が合った。
「一人にしてくれ」
「駄目だ」
「どうしてさ。一人の方が考えも纏まる」
「そんな顔をしているお前を一人に出来るわけがないだろ」
ともすれば、今にも泣き出してしまいそうな、幼子のような顔をして、ヴォルグは唇を噛み締めていた。
しん、と静かになったヴォルグに、ナギはゆっくりと一歩踏み出した。
いつもは自分から触れたりしない。
従者から主に触れるなんて、と恐れが顔を覗かせるが、今のヴォルグを一人にしておくことなどナギには出来なかった。
居心地悪そうに窓の方を向いてしまったヴォルグの傍にナギはそっと歩みを寄せる。
魔界には、もうすぐ冬がやってくる。
きらきらと輝きを帯びる波間の空からは時折冷たい潮風が流れてきて、魔界に慣れていないナギの無防備な肌を容赦なく突き刺した。
「……ヴォルグ」
自分でも驚くほど、頼りのない細い声が出た。
彼が何を考えているのか、分からないことが煩わしい。
(こっちを見ろよ)
いつもは頼まなくても、穴が開くほど見つめてくる瞳が今は窓の向こう、銀色に輝く空に吸い込まれていく。
(一人で抱え込むな)
ナギの心の声が、ヴォルグの胸を波立たせる。
意識していなくとも聞こえてしまうそれに、ヴォルグはぎゅっと目を閉じた。
瞼の裏に浮かぶのはいつだって、血だまりの中に倒れる父の姿で。
ベルフェゴールに無体を働かれたナギの青白い顔が、あのときの父と重なって見えてしまうのが怖かった。
ゴン、と額を勢い良く窓にぶつけたヴォルグの肩に、温かい何かが触れる。
重みのあるそれが、ナギの頭だと気が付くのに少しだけ時間がかかった。
「大丈夫」
「え?」
「大丈夫だよ」
「な、にが」
「今度は俺が居る。だから、誰も殺させはしない」
微笑みを浮かべるナギの顔を、銀に染まった波がきらきらと反射して眩しい。
思わず息をすることも忘れて見つめていると、彼女が少しだけ照れたように視線を逸らした。
「『ありがとう、頼もしいよ』って、応えるとかねえの? 俺だけ恥ずかしい奴みたいじゃねえか」
そっぽを向くナギの頬がうっすらと赤みを帯びる。
無意識の内に手を伸ばせば、髪と同じ浅葱色の睫毛がゆっくりと伏せられた。
触れた肌は、いつだって火傷するように熱い。
魔族の身体には人間にはない魔力を貯めこむ臓器が備わっている。その所為か、人間に比べると体温が低い。魔力が高ければ高いほど体温は低くなり、中には氷のように冷たい者も居た。
ヴォルグの魔力は魔界一のもの。己の温度を知るのが嫌で、母や側近の従者以外には極力触れないようにしてきた。
「冷たい」
「うん」
ナギに触れると、いつも心がざわついた。
触れたことのない肌の熱さに、呼吸をすることさえままならなくなってしまって、指を動かすことが酷く億劫に思えた。
カタツムリのようにゆっくりと、彼女の肌の上で指先を滑らせる。
擽ったそうに笑い声を漏らすナギと数秒だけ視線が交差した。
「何だよ、ガキみたいな顔をして。ハグでもしてやろうか?」
「うん」
「うんってお前、仮にも魔王がそんな簡単に、」
「慰めてよ」
こつん、とぶつけられた額に、ナギは戸惑った。
鼻先が触れるほどの距離で懇願されたそれはあまりにも稚拙で、本当にあの魔王から放たれた言葉なのか、と疑いの眼差しを向ける。
「だめ?」
子どものように首を傾げてそんなことを宣う男に、ナギはぐっと喉を詰まらせる。
「きょ、今日だけだぞ」
「ふふっ」
「何、笑って――」
ぎゅう、と痛いくらいに強い力で抱きしめられて、ナギは一瞬呼吸が出来なくなったのではないかと錯覚した。
肩に顔を埋められた所為でヴォルグの表情は見えない。
「ったく、でかいガキだな」
ポンポン。
無遠慮に撫でた髪は恐ろしく指通りが良くて、ナギは苦笑した。
うりうりと顔を肩に擦りつけられる度、笑いそうになるのを必死に堪える。
「誰か来ても知らねえぞ」
「ん」
「仮眠室、行くか?」
「んーん」
「おい、ちゃんと答えろよ」
「ここで、いい」
濡れた瞳が、今にも零れ落ちてしまいそうで、驚いた。
慌てて強く抱きしめれば、彼が「苦しいよ」と困ったように笑うので、心臓が忙しなく鼓動を打ち鳴らすのに、ナギはまた戸惑った。
「人に睡眠を取れと言っておいて、この野郎……。静かなうちに少し寝ろ。誰か来たら、起こしてやるから」
そう言って、ヴォルグの身体を引き摺りながらソファに移動すると、彼は首を縦に振って、ナギの腕の中で眠りについてしまった。
膝枕ならまだ恰好がつくが、抱き合ったまま眠りの波を泳ぎ始めてしまった彼に、ナギは眦を和らげる。
「本当、困った魔王様だなぁ」
呟いた声はヴォルグには届かない。
ナギの瞳の中で、滲んだ白薔薇がゆらりと揺れていた。